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自分たちが採った藁で出来たわら細工が誰かの手に渡って、その人たちの願いや想いに繋がるということの繰り返しの1年が、自分にとっての生き方に矛盾してなかった

by Shintaku Kanako 地域おこし協力隊

わら細工と聞いてどんなものが思い浮かぶだろうか。たぶん大体の方がお正月に飾るしめ縄を思い出すだろう。

実は私は日之影町に来るまで、わら細工についてほとんど全く知らなかった。キリスト教信者なので毎年元旦は教会で過ごしていたし、たまたま神社に行く機会があったときにしかしめ縄を見ることもなかった。しかもだいたいは、意識して見ていなかったと思う。

だから、日之影町のわら細工たくぼの工房に初めて足を踏み入れた時、わら細工というのはこんなにも美しく、繊細で、温かい細工だったのかと、衝撃を受けた。

そこにはしめ縄だけではなく、万年長寿の想いを託した亀の形の飾り、人とのつながりを感謝した縁結びという飾り、また円形状にわらを編んだランプシェードなどの現代生活用品に至るまで、様々な形のわら細工が存在していた。

そのほとんどのわら細工を手掛けているのが、わら細工たくぼの三代目である甲斐陽一郎さんだ。甲斐さんは、それまで副業として先代が残してきたわら細工を初めて専業として引き継いだ方でもある。それまで家業の傍らで作っていたわら細工を生業として確立させることは、甲斐さんにとって並々ならない覚悟が必要だったと語る。

「わら細工を専業として生きていくと決めた当時は、作業場で一人で一日中下を向いてひたすら藁を綯う毎日が本当に孤独だったし不安でした。おばあちゃんにも『この子どうしたの』って心配されたぐらい(笑)」

今となっては笑い話にできることでも、当時は相当なプレッシャーや不安を感じていただろう。それでも、なぜ諦めずにわら細工を作りつづけることができたのだろうか。

「わら細工をこれまで専業でやってこれているのは、わら細工を手に取ってくださる方が一人また一人と繋がってきたからです。材料を育てるところから始まるモノづくりは自然に左右されることも多く思い通りにいかないことばかりですが、そのことがモノ作りに真摯に取り組む姿勢に繋がっているのかもしれません。幼い頃からずっと手伝ってきたわら細工を作っていくこと、それが誰かの手に渡って願いや想いが託されるということの繰り返しとなる1年が、自分にとって矛盾してない生き方だと気づいたんです。」

甲斐さんは、わら細工を専業として生きていくと決めたからこそ、中途半端な気持ちではやりたくないし、ただ伝統を守るだけの職人になっては駄目だという意識があると言う。

「たぶん、先代のやり方を受け継ぐだけだったら専業で食っていくことができないっていう意識はずっとあります。だからほぼ24時間ずっといかにわら細工をもっといろんな人に興味を持ってもらい売っていくか考えていて。ランプシェードなどの生活用品も、そんな思いがあって生まれた物です。」

甲斐さんのその並々ならない努力や決意が投影されたわら細工は、しかし意に反してとても繊細で柔らかく見える。

そしてわら細工を生業として生きるという選択は、自分の生き方の選択でもあったという甲斐さんの気持ちは、次の世代の子どもたちにももっと知ってもらいたい考え方であると語る。

「(わら細工を専業にしたという経験を通して)将来の夢はと聞かれて職業を答えるのではなく、どんな生き方をしていたいかが本当に必要な考え方ではないかと考えるようになりました。ここにいる山木はまさに今の若者にとても影響を与える存在じゃないかと思います。」

山木博文さんは、わら細工たくぼに2年前に仲間入りした28歳の若者だ。それも、大学院を卒業して横浜から日之影町に移住したという異色の経歴の持ち主である。しかし、ここでもやはり生き方に関する話が出た。

「日之影に来て、緑のふるさと協力隊[i]として様々な家庭に入ってそこで生きている方々の姿を見て、なんてかっこいいんだろう、自分はまだ知らないことがたくさんあるんだと思わされて。そんな中でわら細工を通して誰かに働きかける存在になれたらなと思ったんです。」

未だに日之影では協力隊の山木くんと言われているのが専らの悩みだと笑いながらそう語る山木さんはとても朗らかな雰囲気で、これも日之影という町、そこに住む人たちの影響によるものなのだろうかと思った。」

甲斐さんと山木さんと話していく中で、わら細工という職業に対する見方が大きく変わっていった。それは、わら細工は本当に真面目に人生と向き合っている人たちがなし得る職業であるということだ。もちろん、これはわら細工に限った話ではなく、世の中に存在するすべての職業は、深く突き詰めて考えていくと人生と深く関わっていくものだと思う。だけど、本当にそう考えて仕事をすることができる人はそう多くないのではないだろうか。甲斐さん、そして山木さんの生き方はきっと多くの人に影響を与えると思う。

私自身、このような話をもっと多くの人に知ってもらいたいと切に願いながら、これからも多くの日之影町民にインタビューして、執筆を頑張っていきたい。

[i]緑のふるさと協力隊とは、特定非営利活動法人「地球緑化センター」が行う、農山村に興味をもつ若者が地域再生に取り組む地方自治体に1年間住民として暮らしながら、地域密着型の活動に携わるプログラムである。

わら細工たくぼ 

住所      : 宮崎県西臼杵郡日之影町大字七折13782-2

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